神工ボランティア
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9つの取組をご紹介

水問題に関する啓発活動

神工有志ボランティアの水問題に関する啓発活動は、身近な治水施設への疑問を出発点に、「調べる」「つくる」「伝える」「対話する」を重ねてきた取組です。鶴見川周辺の治水施設を調べ、さらに大規模な治水施設への取材を通して、水害から暮らしを守る仕組みを学びました。そこで得た知識を、説明だけで終わらせず、工業高校で学ぶ技術を生かしたオリジナルゲームや動画へと変換し、初めて知る人にも届く形で発信しています。

その後は、全国の高校生や専門家との対話にもつながり、治水・防災だけでなく、水環境、水資源、国際協力、地域づくりなど、水をめぐる多様な課題へ視野を広げました。高校生だけで水問題を解決することを目指すのではなく、身近な疑問を社会の課題と結び付け、多くの人が水について考える入口をつくることを大切にしています。

身近な疑問から、治水を調べる

活動の出発点は、普段の生活圏にある治水施設でした。大きな施設が身近にあっても、その役割を知らなければ、日常の風景として通り過ぎてしまいます。生徒たちは鶴見川周辺の遊水地に関心を持ったことをきっかけに、「なぜここにこれほど大きな施設が必要なのか」「大雨のとき、どのように地域を守っているのか」という疑問を持ち、調査を始めました。

調べていくと、治水は単に川の水を流すための仕組みではなく、増えた水を一時的に受け止めたり、安全に逃がしたりしながら、住宅地や交通、地域の暮らしを守る社会基盤であることが見えてきました。さらに、大規模な地下放水施設への取材も行い、身近な場所から始まった疑問を、都市全体の安全を支える仕組みについて考える学びへと広げていきました。

学んだことを、ゲームで伝える

写真掲載予定
治水を題材にしたオリジナルゲームの画面、または制作している生徒の様子

水問題は重要であっても、専門用語や制度の説明だけでは、初めて触れる人にとって距離のある話題になりやすいという難しさがあります。そこで生徒たちは、学んだ内容をそのまま説明するのではなく、遊びながら治水の考え方に触れられるオリジナルゲームの制作に取り組みました。治水施設の調査で得た学びをもとにゲームを制作し、防災や治水の大切さを分かりやすく伝える方法へと変えていきました。

ここで生かされたのが、工業高校で学ぶプログラミングやものづくりの力です。「何を知ってほしいのか」を整理し、それをルールや画面、操作、表現へ置き換えていく過程では、作り手自身にも内容への正確な理解が求められます。分かったつもりの知識では、ゲームの中で適切に伝えることはできません。調べた情報を選び直し、相手が理解しやすい順序に組み立てることで、技術を使うことと社会課題を学ぶことが一つにつながりました。

動画にまとめ、学校の外へ

治水について学んだ過程は、短い動画にもまとめました。調査した施設や治水の仕組み、ゲーム制作に込めた考えを、初めて見る人にも伝わる構成へ整理し、より広い相手に届けることを意識して英語での発信にも挑戦しました。

動画をつくることは、活動を記録するだけではありません。「自分たちは何を知り、何を伝えたいのか」を見直す作業でもあります。映像に入れる情報を選び、言葉を整理し、視覚的に理解できる場面を組み合わせることで、治水という専門性のあるテーマを、知らない人へ届ける方法を考えました。技術を学ぶ高校生が、自分たちの学習成果を校内だけにとどめず、社会へ開いていくことも、この取組の大切な部分です。

対話から、視野を広げる

写真掲載予定
全国規模の発表・パネルディスカッションで生徒が発表している様子

発信した内容は、全国の高校生世代が水について考える場でも取り上げられ、生徒たちは自分たちの調査とゲーム制作について発表しました。そこでは、同じ「水」を扱っていても、海外の水問題、自然を生かした地域づくり、節水など、学校ごとに異なる視点から取組が発表されました。さらに、水資源、防災、インフラ整備、国際協力などに関わる専門家との対話も行われました。

この経験によって、水問題には一つの正解や一つの入口だけがあるわけではないことを改めて知ることができました。神工有志ボランティアが取り組んできた治水は、水問題の一部分です。地域の洪水対策を考える視点もあれば、安全な水へのアクセス、水質汚染、気候変動、水資源の管理、食料生産やエネルギーとの関係を考える視点もあります。他の高校生や専門家の考えに触れることは、自分たちの取組を見直し、次に何を学ぶべきかを考える機会にもなりました。

治水から、水問題全体へ

水問題にはさまざまなテーマがある

水は、蛇口から出てくる生活資源としてだけ存在しているわけではありません。大雨や洪水から地域を守る防災、水を安定して利用するためのインフラ、河川や海の環境、農業や食料生産、発電、気候変動、そして安全な水を十分に利用できない地域の課題まで、多くの問題が互いにつながっています。

そのため、この活動では「水問題」という大きな言葉を一度に理解しようとするのではなく、まず身近な治水から入り、調査と制作を通して一つのテーマを深く知り、そこから周辺の課題へ視野を広げてきました。最初から世界規模の問題を遠い話として学ぶのではなく、自分たちの地域にある施設や暮らしとの接点を見つけることで、社会課題を自分たちと無関係なものにしないことを重視しています。

工業の技術を、伝える力に

工業高校の技術というと、機械や電気、情報などを使って製品をつくることが中心だと思われるかもしれません。しかし、技術は課題そのものを直接解決するためだけでなく、難しい内容を分かりやすく伝えたり、興味を持つ入口をつくったりするためにも活用できます。

ゲームを制作する、動画を編集する、図や画面で情報を整理するという作業は、すべて「相手にどう届くか」を考える設計です。水問題への啓発活動では、この設計の考え方を社会課題の発信に生かしています。専門家と同じ立場で答えを示すのではなく、高校生だからこそ抱いた疑問や、学びながら感じた驚きを起点に、同世代や地域の人が水について考え始めるきっかけをつくることを目指しています。

伝えて終わらず、学び直す

この取組で大切にしているのは、発信そのものを最終目的にしないことです。調査した内容をゲームや動画にし、それを社会へ発信すると、質問や異なる意見が返ってきます。その対話を通して、自分たちの説明が十分だったか、見落としていた視点はなかったかを考え直すことができます。そして、新しく得た視点を次の調査や表現へつなげていきます。

水問題は、短期間の活動だけで解決できるものではありません。だからこそ、確認できた事実と自分たちの考えを区別し、分からないことは改めて調べる姿勢を大切にします。身近な治水への疑問から始まった活動を、水と社会の関係を考える学びへ広げ、工業高校で身に付けた技術を「社会に伝えるための技術」としても生かしていく。それが、神工有志ボランティアの水問題に関する啓発活動です。