神工ボランティア
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9つの取組をご紹介

IPビジネスの実践

キャラクターを入口に福祉商品との出会いをつくる

神工有志ボランティアが取り組むIPビジネスは、キャラクターを有名にすること自体を目的とした活動ではありません。障がい福祉事業所がつくる商品と、これまでその商品を知らなかった人との間に、新しい出会いをつくるための実践です。

障がい福祉事業所のキャラクター「さんちゃん」を商品、ゲーム、動画、グッズなどへ展開し、キャラクターを「つくる」だけでなく「育てる」方法を考えてきました。そこで得た経験を、現在はオリジナルキャラクター「なまコ」の展開に生かしています。目指しているのは、「福祉だから買う」だけではなく、「欲しいと思って選んだ商品が、障がい福祉事業所の商品だった」という出会いを増やすことです。

「良い商品」を、どうすれば選んでもらえるか

キャラクターと福祉商品の新しい接点

障がい福祉事業所との商品開発や販売支援を続ける中で、私たちは一つの課題に繰り返し向き合ってきました。丁寧につくられた商品や魅力のある食品であっても、その良さが知られなければ、手に取ってもらうことはできません。福祉事業所の商品であることを伝え、活動への共感から購入していただくことも大切です。一方で、それだけに頼る販売では、商品の魅力そのものが十分に伝わらない可能性があります。

そこで考えたのが、キャラクターなどの知的財産を活用して商品との接点を増やす方法です。IPは「Intellectual Property(知的財産)」の略称として使われます。私たちは、キャラクターをパッケージに載せて終わるのではなく、ゲーム、動画、WEBコンテンツ、グッズなどへ展開し、別々だった体験を一つのテーマでつなげています。まずキャラクターを知り、興味を持つ。その後、商品に出会う。こうした順番も、福祉商品の新しい販売の入口になると考えました。

キャラクターは「つくる」より「育てる」

さんちゃんを展開したグッズ

キャラクターを一度つくっただけでは、継続的な価値にはつながりません。何度も目にする機会をつくり、別の場面でも再び出会える状態をつくることで、少しずつ認知が積み重なります。商品で知った人がゲームに触れ、ゲームで知った人がグッズを見る。動画で見たキャラクターを、別の場所の商品で見つける。複数の接点をつなげることで、キャラクターは単発のイラストではなく、人と商品を結ぶ役割を持つようになります。

私たちは、この「継続して接点をつくること」をIPビジネスの重要な部分と考えています。新しいキャラクターを次々につくるのではなく、すでにあるキャラクターをどのように育て、商品や体験へ広げていくかを考えることが、活動の中心です。

「さんちゃん」で試した、商品への新しい入口

レーザー加工したクッキー缶とかながわキンタロウとのコラボレーション

最初の実践となったのが、障がい福祉事業所のキャラクター「さんちゃん」です。商品だけでなく、ゲームや動画などにも登場させ、学校の外でも繰り返し知ってもらえる機会をつくってきました。さらに、神奈川県PRキャラクター「かながわキンタロウ」とのコラボレーションにも取り組み、二つのキャラクターを組み合わせたデザインをクッキー缶へレーザー加工しました。

ここでは、キャラクターによるテーマづくりと、工業高校で学ぶ加工技術が一つの商品上で結び付きました。商品そのものの品質に加え、「この組み合わせがおもしろい」「このデザインが欲しい」と思ってもらえる理由を増やす試みです。福祉、キャラクター、工業技術を別々の活動として扱うのではなく、一つの商品体験としてまとめることで、これまでとは異なる選ばれ方を目指しました。

認知を、福祉商品との出会いにつなげる

写真掲載予定
さんちゃんが活用された会場と、障がい福祉事業所の商品を扱う販売スペース

さんちゃんは、校外の大規模な催しでもメインキャラクターとして採用され、来場者向けの配布物などへ展開されました。ただし、キャラクターが多くの人に見られることだけが目的ではありません。その会場では障がい福祉事業所の商品を扱う販売スペースも設け、キャラクターを知った人が、その先にある商品へ出会える導線をつくりました。

キャラクターを知る、興味を持つ、商品を見る、実際に手に取る。この流れをつくることで、それまで福祉商品に接点がなかった人にも商品を知ってもらうことができます。「支援するために買う」という入口だけではなく、「キャラクターが気になった」「デザインが好きだった」「商品として魅力を感じた」という複数の入口を用意することが、販売の可能性を広げると考えています。

「なまコ」で、生徒自身がIPを運用する

なまコIPの広がり

さんちゃんで得た経験をもとに、現在は神工有志ボランティアのオリジナルキャラクター「なまコ」を、生徒自身が企画しながら展開しています。オリジナルキャラクター「なまコ」のコンテンツやグッズを開発してIPビジネスを実践しています。

なまコは、一枚のイラストとして使うだけではありません。ゲーム、動画、WEBコンテンツ、グッズなどへ広げ、それぞれの入口からキャラクターを知ってもらえるようにしています。どのような内容なら興味を持ってもらえるのか、どの展開なら次のコンテンツや商品へつながるのかを、生徒自身が考え、制作し、反応を見ながら改善しています。

ここで重視しているのは、完成したキャラクターを宣伝することではなく、一つのIPを実際に運用する経験です。企画、制作、発信、商品への展開までをつなげることで、知的財産がどのように人との接点を生み、商品の価値づくりに関わるのかを実践から学んでいます。

感覚だけでなく、購買への影響を確かめる

これまでの取組では、キャラクターをきっかけに商品へ興味を持つ人がいることを、実際の販売の場で経験してきました。現在はさらに一歩進み、キャラクターが購買に与える影響を確かめる実証にも取り組んでいます。

大切なのは、「キャラクターを付ければ売れる」と最初から決めつけないことです。人の反応や実際の購買行動を確認し、どのような見せ方や組み合わせが商品との出会いにつながるのかを検証する。その結果を次の企画に生かすことで、IPビジネスを感覚的な取組だけで終わらせず、改善を重ねられる実践へ近づけています。

さんちゃんで学び、なまコで試し、福祉へ還元する

さんちゃんで実践し、なまコで試し、福祉へ還元する循環

私たちのIPビジネスの出発点は、キャラクターをつくることではありません。障がい福祉事業所の商品を、どうすればより多くの人に知ってもらい、選んでもらえるかという課題です。さんちゃんを育てる中で、キャラクターを商品、コンテンツ、コラボレーション、販売の場へつなげる方法を学びました。その経験を今度はなまコで生徒自身が試し、さらにそこで得た知見を福祉事業所の商品やキャラクターの育成へ返していくことを目指しています。

「福祉だから買う」から、「欲しいから買う」へ。もちろん、福祉事業所の背景や社会的な意義を伝えることも大切です。そのうえで、デザイン、技術、物語、体験といった商品の魅力から選ばれる機会を増やしていく。キャラクターを入口として新しい人と商品をつなぎ、その接点を次の販売や商品づくりへ循環させることが、神工有志ボランティアが実践しているIPビジネスです。